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さらば、愛機 [カメラ]

あれは忘れもしない、2004年6月30日。10日ほど前に、悩みに悩んで、そして思い切って1D2を予約した店から入荷の連絡があった。銀行に寄ってから店に着くと、黒い正方形の箱が私を待っていてくれた。
息子のサッカーを10Dで撮り続けて1年。その息子が中学生になる際に、全てのカメラ関係機材を手放した。新入生に試合の出番は当分無いだろう、という予想と、日進月歩のデジタル世界で、使わないのに長く持ち続けることは、価値を無駄に消耗させることだと思ったからだ。しかし予想に反して、息子の試合の出番は速くやってきた。所属が中学校サッカー部ではなく、クラブチームだったことも一因。そうなると、もう右手の人差し指がムズムズとせがんでくる。
2004年の秋には、10D後継機の20Dが発売されるとの噂。それを待ってもよかったのだが、待ちきれない。それに、10Dクラスからのステップアップも考えたい。その年3月に発売された1D2が、すこぶる良い評判なのも魅力的。しかし、50万円近い金額は、手持ち機材を全て処分した金額の倍以上。1ヶ月近く悩んだ末の結論は、「今しか撮れない写真を撮る」。こんな高額カメラを買うのも初めてなので、どんなに早くて安くても、この際通販は除外。近所のキタムラに予約しに行くと、1ヶ月待ちとのこと。それでもいいや、と予約し、レンズが無いと話にならないな~、とカタログを枕元に置いて10日目にやってきてしまった。
プロ用機など使ったこともないので、最初は試行錯誤。掲示板での情報を頼りに、無我夢中。途中、大事故にもあった1D2だったけど、4万枚を撮り終える頃、息子は高校生になってしまった。新入生に試合の出番は当分無いだろう、という予想は、今のところ当たっている。違うのは、小学校4年生になった次男の試合が、徐々に多くなってきたこと。今回は、機材は何一つ手放さなかった。
しかし、KISS DXの加入も、多少の影響はあるだろうが、今年になって1D2の出番は極端に減った。日進月歩のデジタル世界で、使わないのに長く持ち続けることは、価値を無駄に消耗させることだと思う。たくさんの思い出をくれたこの愛機とも、別れの予感がしていたのも事実。購入した時と同じように、悩みに悩んで、そして思い切って1D2を手放すことにした。
どしゃぶりの雨の日も、炎天下の真夏の日も、雪の舞う真冬日も、相棒は確実に仕事をこなしてくれた。一度、異音がしてシャッターユニットを交換したこともあったが、私の期待を一度も裏切らなかったばかりか、未熟な私に多くの知識と経験を授けてくれた。サッカー少年たちのたくさんの笑顔と、掲示板を通しての交流も。そして、いくつかの賞と高評価も。これらは、半分以上1D2のおかげ。これがなければ、得られなかった貴重なもの。感謝しているし、いつまでも手元に置いておきたい気持ちも、充分あった。けど・・・
名古屋QRセンターで点検とセンサークリーニングを終え、私の手垢のついたボディを綺麗にして、第2のオーナーの元へ送り出す。これからもきっと、寡黙ながらも律儀な仕事をこなしていってくれるだろう。思い出はとどまるところを知らず、愛着を断ち切ることもできない。慣れ親しんだ右手が、最後に箱へ収めるとき、そっと一言。
さらば、愛機。


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