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変わらないことの幸せ [巷の雑感]

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桜前線の上昇で、満開の桜を楽しいでいる人も多いのではないか。いや、もう散り始めているところもあるかもしれない。もし桜が散らないで、いつまでも咲き続けていたなら、これほどまで愛でる心も湧かなかったかもしれない。一年で一度、今の時期にしか咲かないことが季節の流れを感じ、多くの日本人に愛される理由の一つかもしれない。桜が一年に一度ではなく、数十年に一度しか咲かないのなら、もっと話題になり、希少性が高まり、気軽に見上げて楽しむ余裕は失せるかもしれない。
より楽に、より豊かに、より楽しく、を目指して、人は変化を求める。しかし、何も良い方にばかり変わるとは限らない。より良くと思ったところが、逆方向への変化になってしまうことだってある。チャンスだ、と思う転換の時がある。しかしそれは、天使の招きなのかもしれないし、悪魔の囁きなのかもしれない。
当たり前のように夜が明けて、いつもの様に日が沈む。当たり前のように仕事に行き、いつもの様に家に帰る。当たり前のように家族がいて、いつもの様に食卓を囲む。平凡だ、変化が無い、向上心が無い、そんな言われ方の毎日。そんなに悪い生活だろうか。流れゆく時の中で、変化していく社会の中で、いつもと同じように、変わらない毎日を送ることは、努力を必要とする。努力しなければ、いつもと同じ毎日は送れない。
人が発展・発達してきた原動力は、より良い方向へ望む力。それは欲と呼ばれるものかもしれない。現状を我慢し、苦痛に耐えているのであれば、少なくともそれを取り除きたいという気持ちは、欲とは言わない。けど、現在の生活には取り立てて不自由はないが、もう少し、と願う気持ちの源が、欲から発せられていることも少なくない。いや、欲が悪いと言っているのではない。悟りの境地を開いた賢人以外の、全ての凡人が持っているものだし、それこそが人の発展の力なのだから。しかし・・・
ふと振り返ってみて、何も変わっていないように思える自分の生活。大したことを成したわけでもなく、着実に豊かになってきているわけでもない。かといって、これまで何の努力もしなかったわけではない。自分の実力なんてこの程度、この程度の人間なんだ、と悲観することは全くない。何も変わらない生活を送れることが、何と幸せなことなのか、そうでなくなったときに痛切に感じる。一度もつまずく事無く、一直線に駆け上がれる一握りの人には分かるまい。そうでない大多数の人には、転んだり、立ち止まったり、振り返ったりしたときに、変わらないことが、変わらないものが、幸せに感じることが、きっとあると思う。
いつもの様に桜が咲き、散っていく。当たり前のように子は成長し、巣立って行く。変わってしまって初めて気づく、何も変わらない日々を送れる幸せ。それを望む心は、欲ではないと思う。
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