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夕焼けの詩 その1 [日々の徒然]

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「夕焼けの詩」と言われて分からなくても、「三丁目の夕日」と言えば分ってもらえる人も多いのではないでしょうか。最近映画化され、昨年には続編も制作された、昭和30年代の東京下町を舞台にした心情物語。その原本のマンガ(あえてアニメとは書きません)が「三丁目の夕日」と思われているかもしれませんが、実は本題は「夕焼けの詩」で、サブタイトルが「三丁目の夕日」なのです。
ご存知の方も多いかもしれませんが、現代のせわしない世相とは反対の、実にほのぼのとした雰囲気が伝わるマンガです。ただ、懐かしいだけの印象を与えるかといえばそうではなく、実に心を押しつぶされそうな想いを与えてくれたり、心温まる余韻を抱かせてくれたり、思わず涙する悲しくも辛い心情に落ち込んだりさせられる、なかなか奥の深い一話完結の話が充満しています。絵の作風がそうでもないので、悲惨な気分にはならないですが、それでも中には、かなり深刻で暗い話もあって、単なる「ほのぼのマンガ」とは一線を画します。
私の物心ついた子供の頃とは、もう昭和40年代でしたし、東京に住んでいた訳でもないので、この話の舞台と自分の過去とは、必ずしもオーバーラップする訳ではないのですが、それでも読み手の私を過去のあの時代に連れて行ってくれます。難解な人物関係や伏線を裏読みする必要もなく、一話自体もそれほど長い話でもなく、予備知識は全く無用で、すっきり読めるのが良いですね。精神的にいら立っている時にはリラックスできるかも。私は寝る前によく読んでました。それと、不思議と何度読んでも味わい深く、飽きない。好きなマンガというのはそういうものなんでしょうが。作者の西岸良平さんが、大学の先輩にあたるということは、最近知りました。
もう30年以上、今も続いているらしいですが、私は大学生の頃に知って好きになり、赤い背表紙の単行本を少し集めたことがありました。いつの間にか辞めてしまって、それまで集めた本も何処かに行ってしまったのですが、今回の映画化された影響か、最近本屋で「傑作選」というものが売られていたので、思わず5冊とも買いこんでしまいました。さすが傑作選だけあって、どの話も重い。そして、心の奥底に突き刺さります。一気に読み終えてしまうと、また涙が。年とともに涙腺が緩くなったおじさんには、このグッとくる想いは耐えられませんでした。
読み終えた後のこの想いとは、何なんだろう。一話完結なので、貧しくも暗く、辛い話もあれば、明るく前向きに終わる話もあるのですが、全体を通して流れる「郷愁」に近い想いは、自分の歩んできた過去の思い出を、蘇らせてくれるのではなく、刺激してくれるからでしょうか。それとも、現代とは違う、心のひだに但し書きのいらない、シンプルで素朴でいられた、でも懸命に生きていた時代への憧れでしょうか。言葉で言い表せるほどの文章力はありませんが、内容の濃いこの「傑作選」を本屋で見かけたら、40歳以上の方にはお勧めしたいですね。
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