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すそ野にて 1 [巷の雑感]

小学生のサッカー少年をお持ちの方はご存じのことと思います。また、中学生以上のサッカー少年たちには、たくさんの思い出と想いのこもった大会なのではないでしょうか。いよいよ今年も、各都道府県で「全日本少年サッカー大会」の予選が始まりました。
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33回目を迎えるこのサッカー大会は、12歳以下の小学生が対象となる全国大会。夏の本大会出場を目指して、各都道府県では予選が始まりつつある。高校球児にとっての甲子園と同様、ジュニア年代(小学生)としては最も大きな大会で、最終学年となったサッカー小僧たちが夢見るのが、全国大会出場。そしてそれをサポートする保護者にとっても、その予選は力の入る試合が続くことになる。頂点を目指して、まずはその裾野からスタートする。我が県でも今月から各地区の予選が始まり、来月の県大会出場チームを選ぶ試合と悲喜が続いている。
その日もいつものように、カメラを担いでサッカー少年たちの真摯な表情を撮っていた。私は定点撮影ではなく、試合状況に応じて移動することがほとんどなのだが、やはりこの大会の予選ともなると、応援する保護者の数もかなり多い。試合開始前にはグランドをぐるりと保護者の壁ができたりするのだが、そんな方々の観戦に邪魔にならないように配慮しながら撮っていた。試合は序盤から一進一退の攻防。応援する方にも力が入るのは分かるのだが、私の背後から突然のブーイング。自チーム選手がボールを競り合って倒されたからだ。ふと左右を見ると、どうも私はそのチームの保護者の一団の中にいるようだ。
サッカーの試合中に選手が転ぶのは普通にあること。しかし応援する一団は、ファールを取らなかった審判に不満の表情がありあり。するとまた同じようなシーンが。今度は主審がファールを取ったが、その選手に対する更に大きなブーイングと、「何でイエローカードを出さないんだ」という声が飛んできた。私のすぐ目の前には線審がいたのだが、彼に聞こえるように。スタジアムの観客席からなら、選手や審判との距離があるので、そんな声も届かないかもしれないのだが、ここは小学校のグランドだ。保護者の一団と線審とは数メートル。
その後も自チームの選手が地面に膝を着く度に、「エーッ!」「オイ!」とかの非難を込めた叫びが飛び、イエロカードを要求する声が出る。すぐ傍の線審は、そんな声を制するように手で合図をするのだが、そんなことはお構い無し。逆に近くにいるだけに、保護者のアピールの標的にされているようで、ちょっとかわいそう。選手も一生懸命なら保護者も必死なのだろうが、さすがに私もその光景には不快感を感じた。これは声援ではない。結局そんな非難の声を収めたのは、先取点をそのチーム取ったこと。イエローカードこそ出なかったが、そのチームがPKを獲得して先取点を取ると、その保護者の一団も少しは納得したのか、まあ何とか前半が終了した。
さて私は、ハーフタイムになったことだし撮影場所を移動しようか、と思っていたところ、主審と線審の3人がその保護者の集団に走り寄ってきた。そして、「子供達も一生懸命にプレーしています。そしてそれに応えるように、我々も一生懸命にやっています。今後これ以上、応援以外の声を出すようであれば、この試合を没収試合にしますから!」と言い切った。その言葉に、さすがの熱の入った保護者集団も冷静さを取り戻したのか、以後は「がんばれ」しか言わなくなった。
永年サッカー少年を撮り続けている私の眼には、先のPKを獲得したシーンも、実は微妙な判定で、どちらのチームの選手が悪かったのかは判断の難しいところ。外野の声に押されたという印象は、はっきり言って有る。そんな外野からのアピールが、子供たちの内なるヤル気につながればよいのだが、試合全体の雰囲気を壊すのはどうかと思う。ましてや、小学生の大会だ。経験も分別のある大人の試合を遠くから眺めているのとは違う。
それに加えて、ホイッスルを吹いた後、その主審は、「故意じゃないないのは、分かるんだけどなあ~」と言い訳みたいなことを言って(その声もしっかり保護者に聞こえていた)、PKを指示するのは、当事者の選手に不満が残るだろうし、対戦相手の保護者にはもっと釈然としない気持ちが残っただろうと想像できる。
もちろん、このような大きな大会の審判をやる以上、それに応じたライセンスを持った方なのだろうが、地方の県で、それも県大会ではなく地区予選というと、対戦チーム以外の監督やコーチがボランティアでやっていることがほとんど。この大会にかける子供たちの願いや保護者の熱意の対象になってしまうのは、ちょっとかわいそうな気もしないではないが、その日の最終試合の審判に割り当てられていた人が、自チームと一緒に帰ってしまった、などという不手際を目の当たりにすると、審判に対するモチベーションをちょっと疑ってしまった。
サッカー少年たちのこの大会にかける熱い想いは、日本全国どんな県でも市でも町でも、同じはず。そしてそれをコーディネイトする審判や大会関係者も、日本全国、都会であろうが地方であろうが、本大会であろうが地区予選であろうが、同じであって欲しい。どんな大きな大会、立派な大会でも、強豪チームであろうと無名チームであっても、こんな地方の裾野の予選から勝ち上がっていかなければならないのだから。もっとも、大人である我々がまず、子供たちの前で毅然とした言動をすることが、まずは必須だとは思うが。


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