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すそ野にて 3 [巷の雑感]

今から14年前の平成7年のこと、ウチの愚息1号は市内にある幼稚園の年中組に入園しました。子供たちの健康と成長のため、私たちは何かスポーツを習わせようと思い、総合的な体力強化ができそうなスイミングスクールに入れることを決めていました。ところが愚息は、その幼稚園で仲良くなった友達2人がサッカーを習い始めたのを見て、自分もやりたいと言い出しました。翌年その幼稚園で行われていたサッカー教室に入り、卒園後も愚息を加えたその3人は、当時はまだ珍しかった小学生対象のクラブチームでサッカーを続けました。
その小学生時代の6年間、ずっとそのチームで主力として活躍した3人は中学生になっても、在籍中学のサッカー部ではなく、同じ中学生対象のクラブチームに入団しました。高校進学の際に、この3人は別々の学校に入学したので、そこで別チームに分かれることになるのですが、それまで10年間、同じチームのチームメイトとして過ごしてきました。そして今、我が愚息はこの高校サッカー選手権県大会で既に敗れ、今日の決勝戦は観客席から眺めています。その眼の先には、コイントスの後握手をする両チームのキャプテンの姿。その2人こそ、いつもふざけてばかりいるのに、サッカーとなると眼の色を変える3人組の2人でした。
試合とは、勝者と敗者を決めるもの。そして表彰式は、勝者にとって歓喜の表現の場かもしれないが、敗者にとっては辛い場である、ということは、以前このブログの「敗者の表彰式」という記事で書きました。今回、決勝戦後の表彰式を撮るにあたって、私はそんな訳で両チームのキャプテンをよく知っているだけに、複雑な想いに満ちていました。整列する両チームの中央にカメラを向けると、にこやかな笑顔で握手をする2人の姿をファインダーで確認して、ちょっと安心した自分がいました。でもよく見ていると、私には分かりました。チームメイトが喜びの表情を爆発させているのに対して、安堵感や達成感はあっても、気遣いを感じさせる勝者のキャプテンと、泣き崩れるチームメイトの傍らで、悔しさ辛さをぐっと胸の奥にしまって、笑顔で勝者をたたえる敗者のキャプテン。高校生活最後の大会で、全国へ行けるかどうかの重要な一戦は、まさに好ゲームでしたが、表彰式での姿もまた、両者ともに素晴らしかったと思いました。
サッカーと言えば、日本代表やJリーグが日々注目されるのは当然でしょうが、こんな地方のすそ野の大会・試合にも、実は小さなドラマが有ったりします。サッカーに限ったことではないでしょう。多くのスポーツ・部活動で、勉学とは違った子供同士の触れ合いやそれに伴う悲喜があり、それが成長期の子供たちに与える影響を考え、多くの学校でクラブ活動の推進をしているのだと思います。もちろん、功も有れば罪となってしまう事も有るでしょう。それでも私が今日一日ここで見たもの、既に敗退してしまった選手同士が、何のわだかまりも無く歓談する姿、選手と一体になって応援する後輩たち、勝っても負けても泣き崩れる保護者の姿、最後で最大の試合で、今持てる力を全て出し切ろうとした選手たちが、表彰式が終わるまでそれを貫き通した姿、それらはやっぱり、理屈や理論だけでない、やらなければ分からない・得られない、貴重なものであると感じました。
こんな地方のすそ野の大会だけど、僅かな清々しさは、確かにありました。
 
すそ野にて 3.jpg

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