1D3のセカンドインプレッションも今回で最後だ。
前回、現在の私のサッカー撮影での設定を紹介した。あれだけ、どうのこうの言った測距点選択特性だが、使っている。サッカーを撮っていて、手前を横切りそうな障害物を意識しながら、動く被写体に集中するということは、あまり考えられない、というか無理だと思う。その障害物が大きいか小さいか、すぐに去ってしまうのか、ゆっくり去るのか、などは千差万別で予想もできない。障害物や他の選手にピントを持っていかれないようにするには、測距点選択特性の機能だけでは、何とも不確かで、当てにできない機能のように思える。ただ、この測距点選択特性を連続性優先にしておいても、マイナス要因は無さそうなので、とりあえずそうしているが、撮影者の意思の通りに機能してくれるとは、現状言い切れないと思う。サッカーなどの動体撮影において、コンマ何秒の一瞬を切り撮る作業の中で、この機能を当てにするには、リスクが大きく、「効いてくれたらラッキー」という感じ、とは言いすぎだろうか。
1D3のAFは、調整・設定できる機能がいくつかある。なぜあるかと言えば、使用者の撮影スタイル、指向・嗜好、被写体の大きさ・動く早さ、撮影条件、撮影者の腕などに応じて、使用者自らが最適な方法に調整して、このカメラを使いやすくするためだ。それはAF関係以外でも見受けられる。基本性能の高さとともに、そうしたカスタマイズできる間口の広さが、このカメラがプロ機といわれる所以である。つまりは、答えは使用者自らが出さなければ、誰にも出せないし、他人の出した正解が、自分に最適とは限らないのである。こうした仕様は、40Dなどとは根本的に違い、よく言えば、使い応えのある・奥行きのあるカメラ、悪く言えば、難解なカメラだということになろう。
1D3発売当時から、AF問題で不具合の報告があり、ネット上でも話題になった。状況を全て把握しているわけではないし、それはメーカーのなすべきことで、一ユーザーが対処できるものではないが、私の1D3は快調に機能してくれていると思っている。このブログでも失敗写真を紹介したが、それは撮影した数千枚の中でごく僅かな枚数であり、1D2の頃からは格段に減っていることも事実である。もちろん、私の腕のせいもあるだろうから、それら全てをカメラのせいにはできない。「木を見て森を見ず」という諺があるように、些細なことを取り上げて、1D3が失敗作のような記述をするのは、間違いだと思う。デジタルカメラは、発展途上の製品だから、ファームアップするのは珍しいことではないし、ファームアップしたからといって、「メーカーが間違いを認めた」と言うのもどうかと思う。
動体撮影においてキヤノンが現時点の最新の技術を投入した意欲的なモデルが、この1D3であり、キヤノンにとって挑戦的な機種であろう。しかし、この多岐にわたる機能や性能を、自分なりに使いこなせるかどうか、挑戦されているのは、実は私たちユーザーであるかもしれない、とも思う。
 
下の作例
1D3+EF100-400mm F4.5-5.6 L IS     焦点距離  400mm
F6.3   SS 1/320   ISO 200    評価測光   露出補正 + 1/3   AI SERVO AF   JPEG