3年半ほど前にもこのレンズを中古で購入した。その時には既に、EF100-400を持っていたのだが、可変焦点距離のズームレンズの利便性を捨ててまでも、画質にこだわった単焦点レンズの画を見てみたかった。思えば、私が最初に手にした単焦点レンズがこれだった。
その後、サンニッパ・ヨンニッパへと深みにはまっていくにつれ、このレンズの出番が激減し、使わないレンズは手元に置かない主義の私は、オークションで手放してしまった。しかし今回、このレンズがまた気になりだし、同じくオークションで中古を手に入れてしまった次第。以前持っていたものとは、製造年がかなり違い、今回のものは新しい。このレンズ、1993年5月発売だから、もう14年以上も製造され続けているが、今回手に入れたものは、以前持っていたものと比べ、印象が良い。デジタル対応コーティングが施された、という噂もあるが、定かではない。
EF100-400のテレ端と比べると、明らかに描写力は上。隅々までしっかり解像してくれるし、Lレンズとしての色のりも持っている。反面、F5.6という明るさのせいか、ボケはあまり期待できない。まあ、サンニッパやヨンニッパと比べることは酷だ。その分、安価で軽量で取り廻ししやすい。AFは、もちろんUSMで無音に近く、EF100-400に比べれば早く、さすが単焦点だが、動体撮影においてその差は驚くほどでもない。付属のフードはスライド式で、引っぱるだけなので面倒がなくて良い。鏡胴は太くはないのだが、長さがあるので、収納する際はバックの大きさを考慮しないと入らない。比較的軽量なので手持ち撮影で使えそうだが、ISが無いので、この焦点距離だと一脚を使いたくなる。三脚座が標準装備なのはそのためだろう。
さて、EF100-400を持っている人にとって、このレンズを追加するメリットは何だろう。利便性を犠牲にして得られた性能向上は、確実に有るが大きくはないと思う。例えば、EF100-400とEF400 F2.8Lの併用は、充分理解できるし、私自身がその恩恵を身にしみて感じている。しかし、EF100-400とこのレンズではどうだろう。思い切ってサンニッパ・ヨンニッパに行った方が良いように思える。ではこのレンズの存在価値は無いのかといえば、そうでもない。EF100-400を持っていても、テレ端しか使わないようなら、いっそこのレンズの方が、得られる画は確実に上だ。そんなズームの利便性がそれほどメリットとならないケース、例えば被写体が遠く、ディテイル描写力が重要で、AFの速さが欲しい、そんな鳥撮りなどでは、存在意義が上がってくるのではないか(私の購入理由も、実はそこにあるのだが)。ただ、比較的軽量な点を生かして、手持ちで振り回すには、ISが無い。シャッター速度に気を付けて使いたいので、簡単にISOを上げられるデジタルでは面白い存在になるかもしれない。
汎用性としては、EF300 F4 L ISの方が上だろう。必要とあればそれに1.4倍テレコンを追加すれば、このレンズの代役を務められるかもしれない。そういう意味では、たしかにニッチな需要なのかもしれない。F5.6がF4.0になればもっと魅力的になるのだが、そうなれば価格は倍以上に上がり、大きく重くなり、レンズのキャラは変わってしまうだろう。モデルチェンジしてISが付くだけで、かなり存在価値が上がるだろうが、それでも需要が飛躍的に上がるとも思えない。ズームレンズ全盛の今では、このレンズの前途は決して明るいとは言えないが、それでもこうしたレンズをカタログに残しておいて、キヤノンの懐の広さを示して欲しい、と切に願っている。

下の作例
1D3+EF400mm F5.6 L      焦点距離 400mm
F6.3   SS 1/1600   ISO 400    評価測光   露出補正 +-0   AI SERVO AF   RAW