先週までオリンピック一色で、テレビに向かって叫んでいた我が家もすっかり静かな、いつもの生活に戻ってしまった。振り返ってみれば、4年間の忍耐と修練の成果を、一瞬の輝きで表現してくれるアスリートたちは、花火にも似ているのかもしれない、と思った。
今回のオリンピックにも、日本人メダリストが多く出た。競技の種類や内容、メダルの色にこそ違いはあれ、全世界から集まった優秀なアスリートたちのなかで、4年に1度、全世界の眼が集まるという重圧の中で、メダルを獲得した人には称賛が与えられて当然だし、私も万雷の拍手を送りたい気分であることは間違いない。それでも私は、やっぱり個人種目よりも団体競技の方が好きだ。
オリンピックが終わったばかりだから、総集編とかハイライトシーンが連日テレビで放映され、あの時の興奮を呼び起こしてくれる。そんな感動的なシーンを見ていると、選手個人の努力によって結実した勝利より、至らなさを補いながら互いに一つの目標に登りつめていった団体競技の歓喜のシーンの方に、よりグッと来る感動を覚えてしまう。まさに、1+1が2ではなく、3にも10にもなるということを体現した瞬間だ。あの銅メダルを獲得した男子400mリレーがその顕著な例かもしれない。
もちろん、団体競技とて個人の集まり。一人一人の過酷で地味な努力と修練の結果が無ければ、チームとしての勝利はありえない。誰か一人のおかげで勝つことも、誰か一人のせいで負けることもないのだが、全員の気持ちと技量が集中しないと勝てないのも確かなことだ。そんな面に、大いなる魅力を感じてしまうし、メダルを手にするという快挙を成し遂げた喜びに、より感動したりする。
個人競技にそんな感動が無いか、といえばそんなことはないし、「団体競技は日本人向き」と言えるほどの見識もない。これはあくまで私個人の偏った見方であることは重々承知しているのだが、互いに鍛えあい認め合い、切磋琢磨を繰り返してきた、チームメイトの手と手、顔と顔を合わせて泣き崩れるシーンは、やっぱり私は好きだし、これこそがチームスポーツの醍醐味だと思ってしまう。
再度言うが、個人競技が嫌いな訳ではないし、その努力の結実が決して劣るものでもない。団体競技の歓喜の瞬間の方が、きっと私には分かりやすいのだろう。団体競技の場合、メダルは登録メンバー全員に渡される。たとえその試合に出なかった選手にも。当然と言えばそうなのかもしれないが、そんなところも私は好きだ。
さて、高校野球も終わり、オリンピックも終わった。多くのスポーツの大会が行われた夏休みも、もうすぐ終わる。新たなスタートに立つ者も、一区切りする者もいるだろう。結果はどうあれ、今年も思い出深い夏が過ぎてゆく。