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熱帯魚店の仕入れ その2 [熱帯魚]

「不用魚買い取ります」という看板やチラシを、熱帯魚店で見たことのある人は多いだろう。しかし最近は「不用魚引き取ります」になってしまった。昨日の続きである。
客が飼えなくなった、邪魔になった、不用になった熱帯魚を引き取る熱帯魚店は、当然営利目的の商売をしている店だから、損得勘定を考えるのは当然である。その店で1匹千円にて販売されている魚だとしよう。持ち込む客側は、店の利益を差し引いても、700~800円くらいで買い取ってもらえるのでは、と期待する。しかし現実はそう甘くはない。1匹千円で販売されている魚の仕入額は500~600円くらいである(仕入額に関しては、また機会を改めて説明する)。それ以上の額で買い取るのは店側の損だ。何もその客から買わなくても、問屋から仕入れればよいのだから。
店側としては、予想外の仕入れになる。店の水槽本数は限られる。店にとって水槽や魚は商品だ。計画的に売れ筋商品を揃えなければ商売にならない。魚種や大きさによっては、その魚のために、水槽を1本空けなければならないかもしれないし、現状では無理なこともある。支払いも突然発生だ。問屋からの仕入れだと、支払日が決まっていて、それまでに用意すればよいのだが、買取魚の場合は、即金が原則だから、数百円ならまだしも、もっと大きな額を即金で支払うことは、計画的な営業会計にしわ寄せが来ることもある。
熱帯魚は生き物だから、生かしておくのにコストがかかる。店側が欲しくない魚種を引き取っても、水を替え、エサをやり、販売するまで生かしておく必要がある。このコストは、魚種にもよるが、店に居る期間が短ければ短いほどかからないが、だいたい不用魚となるものは、コストの高いものが多いし、なかなか売れないものが多い。突然やってくる不用魚は、その魚がウチの店でいつ頃まで飼わなければいけないのか、店主は考慮する。
熱帯魚は生き物だから、死ぬ場合もある。死んだら価値はゼロだ。持ち込まれた不用魚がどのような状況で飼われていたか、店は分からない。病気に感染していないか、弱ってないか、奇形がないか、成長不良がないか、偏ったエサで拒食や偏食になっていたりしないか、店側のリスクはいくつもある。問屋から仕入れる熱帯魚は、店で販売されることを前提にされた商品なので、このようなリスクは少ない(皆無ではない)。しかし、常連客といえども、一般の人に保証を求めることはできないし、十数年の常連でも明日からパッタリ来なくなることもあるのだ。店側のリスクは少なくない。
問屋から一定額を仕入れれば、バックマージンが増える仕組みも一般的だ。大口取引先には、何かと優遇してくれる。メーカーの在庫過多商品を安く流してくれたり、新製品をいち早く送ってくれたり、販売キャンペーン商品の情報やオマケ品を多く得られたり。店は通常営業をしていく限り、問屋との関係は切れないし、なるべくよい状態を維持したいと思っている。だから、どこの誰とも分からない人から仕入れるより、問屋との取引額を上げたいのだ。
以上の点を踏まえて考えると、その店で1匹千円にて販売されている魚なら、200円未満でしか買い取ることはできない、ということを分かってもらえるだろうか。人気のない魚や大型になる魚(不用になる魚は、こういったものが多い)だと、タダならもらうが、金を出してまでは欲しくない、という店側の論理を、分かってもらえるだろうか。それが「不用魚引き取ります」の看板の意味だ。
 


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