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夕焼けの詩 その2 [日々の徒然]

前回、「夕焼けの詩 三丁目の夕日 傑作選」というマンガのことを書きました。傑作選だけあって、どれも重く味わいのある話と私は思っているのですが、ちょっと調子に乗って、今回はその第一巻に載っている「五月の風」という話を紹介したいと思います。もちろん、本文そのまま載せわけにもいかないので、私なりのダイジェストですが。
夕焼けの詩2.jpg

二歳の時に母を病気で亡くしたミッちゃん。父と二人暮らしで、料理や洗濯などの家事全般をこなす健気な小学生。好きな父のために、本当は遊びたい盛りなのに我慢して、学校から帰ると毎日家事に勤しむ。でも、一年に一度だけ嫌いな日があった。それは「母の日」。学校では、お母さんに感謝しましょう、とか、お母さんに贈り物を作りましょう、とか言われるが、その一つ一つが気に入らない、というか、ズキズキ心に突き刺さってくる。ふてくされて家に帰ってみると来客が。それは、写真でしか知らない、母にそっくりの女性だった。一瞬母が生き返ったのかと喜ぶが、実は娘の気持ちを察した父が呼んだ、死んだ妻の妹だった。
学校から帰ると一人で買い物に行き料理を作るのが日課だが、その日は母そっくりのおばさんと一緒に買い物をし、自分が作ったことのないような料理を教えてもらい、一緒に食べた。母が生きていたらこんな風な毎日が送れるのだ、と喜んだミッちゃん。夢にまで見た母との生活だが、そんな時間はあっという間に過ぎていく。終電で帰るおばさんを見送ったあと、母の日に何かプレゼントしようと思い付く。
翌日、貯金箱を開けてプレゼントを買ったミッちゃんは、電車に乗っておばさんの家まで届けに行く。喜んでくれる顔を想像し、母の日を祝える喜びを感じて。ふと垣根越しにおばさんの家を覗くと、おばさんとその子供が仲良く語っているのを見てしまう。「今日は母の日だから、お母さんの肩を叩いてあげるね」という子供の声を聞いてしまう。その瞬間、やはり自分の母ではないということを実感したミッちゃんは、脱兎の如く走り出した。おばさんにはおばさんの生活が、おばさんの子供がいる現実を突きつけられた想い。そして、自分が抱いていた母との生活を、おばさんに重ねてしまっていたことを、恥ずかしむ気持ち。泣きながら家に帰るミッちゃん。
そしてまた、父と二人の、いつもの生活が続く。でも、あの時の夢のような時間が、いつまでも忘れられずに残っている。おばさんに教えてもらった料理、ロールキャベツとともに。

この本に載っている話の雰囲気が分かっていただけたら幸いです。
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Pompoko

彼の作品を見たのがこれが最初だったのかどうか、それがビッグコミックだったのかそれ以外だったのかは思い出せないのですが、間違いなく、彼のデビュー作を見たことだけは覚えています。
そのように解説があったのでそれを知り、新人なのに、なんて素晴らしい情景を描く人だろう。優しい漫画を描く人なんだろうって思ったのも覚えています。
どのお話も良いですよね~~
by Pompoko (2008-09-05 14:37) 

ジュニアユース

Pompokoさん、こんにちは。今はUSAでしょうか。
この作者の西岸さんは、この作品しか知らないですし、もちろんお会いしたこともないのですが、こんな雰囲気の話を30年以上も書き続けているのは凄いことだと尊敬していますし、また人柄も窺い知れますね。

by ジュニアユース (2008-09-06 00:01) 

ぴんさん

こんばんは

この漫画BCオリジナルで読んでいました^^
今回ご紹介の話、とっても辛いですねぇ
現実の辛さ痛さが何ともいえず胸に突き刺さるのですが
それでも健気に頑張っていく姿に「僕も頑張らなきゃ」って思ってしまいます
世の中、どうしようもないってことは確かに少なくないのですが
それでも人は助け合って生きていかなくてはならないのですね
素晴らしい作品の紹介ありがとうございました
by ぴんさん (2008-09-06 21:54) 

ジュニアユース

ぴんさん、こんにちは。
もちろん私の両親は健在ですし、近所にこんな境遇の子もいませんでした。それでも何だか、身につまされる気持ちになってしまいます。作者の絵や話の進行のうまさでしょうか。自分がこの状況だったら、と引き込まれてしまいます。わずか16ページのマンガなんですが。
話自体はそんなにびっくりするような画期的なものではないでしょうが、ほのぼのとした絵柄で隠されているとはいえ、暗い話です。そして日常のちょっとした暗さだったりします。だから実体験でなくても、身近に感じてしまうのかもしれませんね。

by ジュニアユース (2008-09-07 01:16)