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7D ファーストインプレッション その8 [カメラ]

さて、前回はAF性能について私見を書いたが、ここからはそれ以外の部分について、気付いた点を書いてみようと思う(あくまで私の「感じ」であって、正確なデータに基づいたものではないことは、これまで同様)。
1D3で採用された「被写体追従敏感度」が、7Dでも採用されたことは、動体を撮影目的とする者には嬉しいことだ。もちろん私もこの機能の恩恵を受けている一人。ただ、設定・調整画面が1D3と同じなので、調整幅や効果も同じなのかと思っていたら、どうも7Dのそれは利き具合が弱いような印象がある。そのところを、またキヤノンお客様相談センターにメールにて問い合わせてみたところ、

EOS 7Dの被写体追従敏感度につきましては、EOS 1D MarkIIIと同等
ですが、センサーサイズが異なるため若干の違いがでます。

との回答だった。この「センサーサイズ」というのが、AFセンサーなのかCMOSセンサーなのか分からないし、もう少し詳しく解説してくれると有り難かったのだが、まあこのあたりは、自分自身で実戦を繰り返しながら調整を繰り返さないと分からないところかもしれない。
連写に関してだが、7Dは高速連写が秒8コマ、低速連写が秒3コマと固定されていて、1D3のように任意のコマ数を設定することはできない(秒5コマとか7コマに設定することはできない)。この点は実に口惜しい感じがするが、たぶんコストダウン故のことだと思うので、7Dの価格を考えると仕方ないか。このコマ数は最高速度であって、使用するレンズ、絞り値、シャッター速度、AF設定などで変化する(低下する)ことはご存じのことだと思うが、動体撮影の実戦では、きちんと被写体を追従しながらどれだけ連写できるかが大切であって、表示値が出ればよいわけではないし、そうでない場合も、全てがカメラのせいとは断言できないところもある。その点を考えると、撮影者自身のスキルにも左右されるが、概して条件が良ければ、7Dは秒8コマは出ていると思う。ただ連写速度の実効性というか、条件が悪くなった場合の連写速度の低下は、AF同様やっぱり1D3の方が少なく感じる。ちなみにレリーズタイムラグは、数値は分からないが、1D3の方が7Dよりも少ないと感じる。
1D3にあった「ISOセイフティシフト」が7Dには無い。7Dにも「セイフティシフト」は有るのだが、ISOの可変ができない。その代り、7DではMモードでISO オートを選べるようになった。ただ1D3には、ISO・絞り・シャッター速度の制御範囲を設定できるのに対して、7Dではできない。これらの違いが実戦での撮影にどう影響するのか、しないのか、何ともいいにくい部分だが、概して7DのMモード+ISO AUTOの方が有効な機能と思える。
たとえば、シャッター速度優先(Tv)で1/1000に設定しサッカーを撮っていたとしよう。急に光量不足に陥った時、絞り値を自動的に開けて適正露出を得ようとするのがTvモードなのだが、そのレンズの開放F値でも適正露出を得られない場合、7Dのセイフティシフト(Tv/Av値)をONにしておくと、自動的にシャッター速度を落としてしまう。撮れないよりはマシかもしれないが、ここはISOを上げて対処して欲しいところ。1D3のISOセイフティシフトをONにしておくと、自動的にISOを上げてくれる。ただこの場合、装着レンズの開放F値でも適正露出が得られないとカメラが判断した場合であって、必然的に開放F値での撮影になることと、ISOの制御範囲を設定していても、ISOセイフティシフトが優先して、撮影者の意図しないISO値に跳ね上がる可能性があること、これが注意点だった。装着レンズの開放F値になる前にISOを自動的に上げてくれるようにするには、絞り値の制御範囲を設定しておくことだったが、1D3でこれの設定ステップが荒く、イマイチ使いづらかった。これに対して、7DのMモード+ISO AUTOは、シャッター速度・絞り値を細かく設定でき、かつそれを固定して、ISOを可変することで適正露出を得ようとするので、こちらの方が概して、進歩した有効な機能だと思う(ISOの上限設定はできないが)。
測光方式も従来と変わった。1D3のAF連動スポット測光の要素を組み込み、色情報も加味して露出精度を高めた、新測光システムになったらしいが、私がサッカー撮影で評価測光を使ってみて感じたのは、若干オーバー気味に写る場合がある、ということ。これまでは、屋外晴天でのサッカー撮影では、サッカー選手のナイロン素材のユニフォーム(特に白色)のせいか、アンダー目に写ることが多く(1D2でも1D3でも)、露出補正を若干プラスにすることを私的にはデフォルトにしていたが、7Dではそれではオーバーになることもあった。この点も、キヤノンお客様相談センターに質問してみると、

EOS 7Dは「iFLC測光システム」により、他の機種と異なり、AF時の反射率
や画面の色情報を利用した露出設定を行いますので、撮影結果の露出に
違いが出ることがございます。

との回答を得た。7D以降、この測光システムが採用されるだろうから、従来機とは違った考え方をしなければならないかもしれない。また色に関しても、デフォルトではレタッチ前提の冴えない色の出方の1D3と比べ7Dは、Kissほどではないが、コンシュマー機らしい見栄えのする画を最初から見せてくれる。
ファーストインプレ8-1.jpg

上の作例
7D+EF400mm F2.8 L IS  焦点距離   400mm  シャッター速度優先  任意1点指定
F3.5   SS 1/1000   ISO 160   評価測光   露出補正 ±0   AI SERVO AFⅡ  RAW
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7D ファーストインプレッション その7 [カメラ]

前回、「条件が良ければ7Dは、1D3と比べて遜色ないAF性能だと、今のところ思っている」と書いた。ではこの、条件が良い、というのは、どういった場合か、現在の私見を書いてみたいと思う。
中央のAFフレームを1点指定して使い、F2.8の単焦点レンズを使って、光量豊富でその変化が少ない撮影状況。これが私の言う、条件が良い、という場合だ。そして7Dは、こうした上記の条件が悪化するにつれ、撮影結果の落ち方が、1D3よりも大きいかな、と思える。
まず、7Dの中央1点のAFフレームの性能には、私はあまり不満が無いのだが、それ以外の測距ポイントについては、1D3の方がはっきり上だと言える。私はサッカー撮影に際しては、中央のフレームをあまり使わないのだが、そういった使い方では、1D3の方が7Dよりも信頼できる。7Dの中央以外のAFフレームでは、僅かに光量が落ちるだけで、合焦速度が落ちたり、迷ったりすることを何度か経験したし、動体追従性能でも歩留まりの悪さをみせてくれる。
開放F値がF2.8クラスの明るい大口径単焦点レンズ(私の場合はサンニッパやヨンニッパを指す)と、もっと暗いズームレンズを使うのとでは、前者の方が合焦速度も速く、追従性も良いのは、1D3も7Dも同じだが、後者のレンズを使った場合の差(合焦速度および追従性の悪化度)が、7Dの方が大きいように思える。1D3の方は、レンズ性能に足を引っ張られても、何とかジャスピンを得続けようとする馬力の強さを感じるが、7Dにはそれを感じられない。
光量が乏しくなるほど、センサーに導かれる光も少なくなるので、AF性能の低下を招くのは、どの機種でも同じだと思うが、それでも1D3はかなり頑張ってくれる。7Dでは1D3比べ明らかに、速度と精度の低下が感じられる。周辺部のAFフレームを使った夕暮れの撮影で、1D3では何とか合焦できても、7Dでは迷って合焦できない場合があった。また先日、雨上がりの人工芝グランドでサッカーを撮ったが、光量自体が豊富でも、照り返しの光などが有って、難しい光線状況の場合、7Dではどうもルーズな合焦になることが多かった。1D3でもフレアーっぽい画像を量産してくれたが、ピント自体はしっかり来ていたことを考えると、やっぱりこの点でも差を感じる。
以上はあくまで、私がサッカーという動体撮影で、1D3と比べた場合の印象であって、クラスも価格も違う両機を比べること自体、無理があるのかもしれない。むしろ、1D3の半分以下の価格で、ここまで肉薄できたということは、7Dのコストパフォーマンスはかなり高いと見ることもできると思う。また静物撮影では、この差はもっと縮まるかもしれない。
前回、キヤノンの方と電話で話す機会を得たと報告したが、話の中でその方は、1D3と7DのAF性能差をはっきり認めた上で、その要因の一つに、1D系のみが採用している楕円サブミラーのことを挙げていた。詳しい技術的なことは、私には分からないのだが、レンズを通して得た光束を、測距センサーに導くサブミラーに、1D系は楕円ミラーを、その他の機種は平面ミラーを使用している、というのである。この差が、センサーに届く光の質を左右し、元々のセンサー自体の差もあって、1D3と7DとのAF性能差を生んでいる、らしい。1D系は中央1点なら開放F値がF8でもAFできるのに対して、その他の機種ではできないのは、何もセンサー自体の性能ばかりではなく、そのセンサーまで導く道筋の性能差もあってのこと、ということだ。そしてこれらの部分は、コストに反映する所でもあり、現在の1D3と7Dとの価格差の一因にもなっているらしい。
総じてAF性能に関しては、7Dは最新のデジタル技術を使って1D3に肉薄するところまで来たが、2年以上前の機種とはいえ、基本的にコストがかけられ、高価な部材を使って組み上げられた1D3に対してでは、撮影状況の変化に対する対応力が弱く、比較してみると1D3の骨太な性能を引き立たせる結果になってしまった、と言えなくもない。ただ両機の価格差を考慮すると、どうだろう。またAF性能だけが、そのカメラの価値を決めるものでもない。1D3との比較結果が、必ずしも7Dの存在価値をおとしめるものではない、と私は思うのだが。
ファーストインプレ7-1.jpg

上の作例
7D+EF400mm F2.8 L IS  焦点距離   400mm  シャッター速度優先  任意1点指定
F3.5   SS 1/1000   ISO 400   評価測光   露出補正 ±0   AI SERVO AFⅡ  RAW
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敗者の表彰式 [巷の雑感]

敗者の表彰式.jpg

サッカーに興味のある方は、このニュースは既にご存じのことと思う。先日のナビスコカップ決勝で敗れたJリーグのチームが、その表彰式で非常識な態度をとったということで、準優勝賞金(5000万円)の返納を申し出た、という話。この件は昨日、賞金の返上の代わりに、選手教育、社会貢献、地域へのサッカー普及活動に使うということで決着したようだ。
確かに、日本のサッカーピラミッドでは、常時ではない日本代表を除けば、Jリーグはそのトップに位置し、多くのサッカー少年・青年たちの目標となっているのだし、衆目の集める場での行動となれば、律しなければならないのは、社会人として自明のことと思う。しかし、勝者と敗者を決めるのが試合で、ましてや優勝をかけた試合でとなると、負けた選手たちの心情も、察するべきところはある。ラグビーでは、試合終了のホイッスルが鳴ると、敵も味方もない「ノーサイド」だという。互いに称え合うことはことはサッカーも同じだが、優勝を目指して全力で戦ったゆえの悔しさを、直後に掌を返すように無くすことは、大人でもなかなか難しいことだと思う。
私も協会のお手伝いとして、これまでサッカー少年・青年たちの表彰式の写真撮影を多くこなしてきた。優勝して喜びを弾けさせている、応援の保護者や観衆の称賛の声に中にいる、そんな優勝チーム・選手の隣に、試合直後に並ばされる敗者は、まるで勝者とわざと対比させるようで、苦痛以外の何物でもないのでは、と思ったことが何度あった。他の競技、大会などで、たとえば一位から六位までが決まって、その中から一位と二位のみを表彰する場合は、また違うかもしれない。決勝戦のみで、その場にいるのは勝者と敗者だけ、しかも試合直後、という状況は、敗者にはなかなかキツイ表彰式とも考えられる。特に小学生などでは、一方は跳びあがって喜びを表現し、もう一方は泣き崩れて地に伏せていたりする。表彰式とは、敗者にはこんなにも残酷な行為なのか、と早く終わってくれることを願ったことも多々あった。なので、敗れた側が表彰式に出たくない気持ちを、私は十分理解しているつもりだ。
以前、高校生のサッカー大会でのこと。決勝戦直後の表彰式を撮影するために、私はカメラを構えていた。優勝したチームは意気揚々と観客や保護者に手を振りながら、既に整列を終わっている。敗れたチームは、出たくない行きたくない、という気持ちがアリアリで、うつむいたまま動かなかったり、立っても足取りは重い状態。その時そのチームのキャプテンマークを付けた選手が、「最後までキチンとしようゼ。俺たち何も・・・。最後まで胸を張っていこう」と声を絞り出し、同僚の肩をたたきながら整列させている光景を見たことがある。私はこの敗者にこそむしろ、拍手を送りたい気持ちで一杯だった。
終戦直後の敗者は悔しいだろう、すぐにその場から立ち去りたい気持ちで一杯だろう。なのに、勝者が待つ表彰式に向かわなければならないのは、苦痛だろう。でも、今日は敗れたとはいえ君たちも、この決勝戦に来るまでに、多くの勝利の願いを打ち破って勝ち上がってきたはずだ。そんな君たちに敗れた敗者たちのためにも、胸を張って表彰式に出る責任が、あると思う。そしてこの準優勝という表彰は、今日のこの試合に対するものではない。優勝決定戦まで勝ち上がった、これまでの戦いぶりに対して送られるものだ。決して、卑下するようなものではないはずだ。
勝者になる喜びも、敗者に甘んじる悔しさも、たくさん経験してきた大人のJリーガーがとった行為だから、今回は問題になったのだと思う。そしてそれに対する処罰が、選手の育成や普及活動というなら、ぜひともそんな胸を張る敗者を育てていただきたいし、私たちも、敗者に盛大な拍手を送れる観客になりたいものだ、と思う。

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7D ファーストインプレッション その6 [カメラ]

ファーストインプレ6-1.jpg

1点指定でのAFの速さ・精度についてだが、あくまで私の「感じ」として聞いていただけるのなら、条件が良ければ、1D3と比べて遜色ない性能だと、今のところ思っている。遜色ない性能とは、逆な見方をすれば、1D3を7Dは超えてはいない、とも言える。
私のいつもの被写体、サッカー選手は、一定方向に動くわけでも、一定速度で動くわけでも、次の移動先が予測できるわけでもない。動き、止まり、ターン、を小刻みに予測なく繰り返し、たまに屈んだりジャンプしたりもする。また人間なので動く時は形を変化させる。腕や頭を振って走るし、ナイロン繊維のユニフォームは、光の反射具合が刻一刻と変わったりする。他の選手とぶつかり、重なり合うこともあるし、前後左右に移動すれば、順光・逆光・日なた・日陰などの光線状況も変わるのは当たり前だ。そんな動体に対してピントを合わせ続けるAI SERVO AFだが、1D3はキヤノン機の孤高の存在として、あくまで100点満点を狙いにいく。撮影条件が悪くても、どのレンズと組み合わせても、果敢に100点を狙いにいく。それゆえ、時に失敗して大外しということもあるのだが。7Dもさまざまな条件・状況が良ければ、1D3に近い性能を見せてくれる。むしろ、高画素な分、決まった時の画は、なかなか緻密で見栄えがする。しかし7DのAFは、そうした状況の変化に対してどうも、90点でヨシ、とするところがある、というのは、私の考えすぎだろうか。
さてそこで、前回の記事で載せた、1D3と7Dの比較画像を再度見て欲しい。気がついた方もいるのではないだろうか、AFフレームの大きさが違うことを。見た感じでは、1個のフレームが、7Dの方が1D3よりも確実に大きい。AFフレームは、測距しているセンサーの位置を示しているもので、センサー自体がこうした四角の形をしている訳ではない(ラインセンサーという線の組み合わせ)ことはご存知の方も多いと思う。それにしても、一つのフレームの大きさが違うということは、1点指定のAFで、7Dは1D3よりも広い範囲で測距してピント合わせをしているのではないか、それゆえ、7Dの合焦は1D3のそれよりも幅が出てしまうのではないだろうか、それゆえ、もっと狭い測距範囲の必要性を考えてス、ポットAFというモードを新設したのではないだろうか、という仮説が私の中に湧きあがった。
この点についても、メーカーであるキヤノンお客様相談センターへ、メールにて疑問をぶつけてみた。少々時間はかかったが、本日得た回答は以下のとおり。

測距面積につきましては、EOS 7Dの方が広くなります。詳細な面積数に関しましては、
非公開のためご案内を控えさせて頂きます。

同じ1点のAFフレームを指定して動体を追っていても、画面内で測距している面積は7Dの方が大きいということは、合焦のルーズさが7Dの方が大きい、ということにならないだろうか。そしてそれを解消するには、測距範囲を狭めたスポットAFを使うべき、ということだろうか。
本日メールにて回答してもらった後、今度は電話にて担当男性と、この件で話す機会を得た。その話の中で得られた情報は以下の点だ。

・1点指定AFとスポットAFでは、測距範囲が違うだけで、センサー自体の性能差は無い
・測距範囲を狭めると、意図しない測距情報が入ってくる可能性が少なくなる。
・それゆえ、合焦精度が上がる場合がある。
・しかし、その為には被写体を正確にとらえる撮影者の力量が必要。
・特に動体撮影の場合、正確に動体をトレースできないと、かえってマイナスになることが多い。

CMOSセンサー自体のサイズが1D3より小さいAPS-Cであるにもかかわらず、高画素化した7Dは、ブレやズレが目立ちやすいという話も聞く。モニターでジャスピンと思った画でも、等倍にしてみると、僅かにピンズレしていた、ということが私にも何度かあった。高画素とAF性能の両立は、なかなか難しいのだと思う。それゆえ、今回の7Dは、かなりこの点で頑張ったと思うが、両機のコンセプトの違いが、こんな点にちょっと感じられるような気がする。
ちなみに、お客様相談窓口の担当者から、今度登場する1D4にも、スポットAFが搭載されると聞いた。1フレームの測距面積が7Dより小さい1D4にも、更に測距面積を狭めたモードを搭載するのは、両機の狙うユーザー層の違いを表しているのかもしれない。
ファーストインプレ6-2.jpg
上の作例
7D+EF100-400mm F4.5-5.6 L IS  焦点距離   400mm  シャッター速度優先  任意1点選択
F5.6   SS 1/800   ISO 160   評価測光   露出補正 -1/3   AI SERVO AFⅡ  RAW
 

上の画像の拡大


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7D ファーストインプレッション その5 [カメラ]

10月2日の発売開始日に手に入れた7Dだが、もう1カ月以上経ってしまった。今更ファーストインプレというのも、何とも気が抜けてしまったような感じだが、一応最後まで書き続けていきたいと思う。

さて前回、ゾーンAFのことをいろいろ書いたが、一つだけ追加して書いておきたい。実は私、7Dでサッカーを撮る時以外は、ほとんどこのゾーンAFを使っている。一眼レフカメラを使い慣れている方は、全点自動選択AFはあまり使わないのではないか、と推測する。やっぱり撮影者自身が意図したところにピントを合わせたいので、自動選択でカメラに任せるというのは、どうも気がすすまないだろう。コンデジのようにパンフォーカスで撮りたいのなら別かもしれないが、多少のボケを生かした一眼らしい写真を、ちょっと構図を考えて、というなら、実はこのゾーンAFは、なかなか使い易いことに気付く。ゾーンAFは全点自動選択と1点指定との中庸で、前者よりも撮影者の意図が反映しやすく、後者を選んだ場合の、ピントの背景抜けの失敗を防いでくれる。なので最近は、標準でこのAFモードを選んでおいて、どのゾーンを使うか、その切り替えをマルチコントローラーでしながら撮っている。サッカー撮影という集中力の必要とする被写体ではなく、スナップ撮影や日常の撮影では、なかなか使いやすい、的を得た設定と言えるかもしれない。

さて、話はサッカー撮影に戻るとしよう。1点指定AFを選択し、この7Dでサッカーを撮るとしよう。縦位置でサッカー選手を追う私の場合、AFフレームの配置は1D3より7Dの方が使いやすい。中央のAFフレームが最も精度の高いことは分かっているのだが、そこでは選手の腹部あたりになることが多く、もう少し上のフレームを使いたい。縦で中央の上のフレームというと、1D3では2つ、7Dでは3つ選ぶことができる。どちろも一番上(つまり一番端)のフレームでは端過ぎて、今度は選手を追うのが難しくなるので(特に単焦点レンズでは)、1D3では中央の一つ上のフレームを使わざるをえない。45点ものフレームを持ちながら、撮影者が指定できるのが19点と減ってしまった弊害(1D2の時は45点どれでも選べた)とも言えるかもしれない。7Dでは19点のフレーム全てを選ぶことができ、縦にすると中央から一番上まで2個のフレームがあり、この上の方(一番上のすぐ下)のフレームを指定して使っている。以下がその比較画像(向かって左が7D、右が1D3。赤いフレームが指定したAFフレーム)。
ファーストインプレ5-1.jpg
7Dの方が若干上にあることが分かっていただけるだろうか。大差無いように思えるかもしれないが、この微妙な差が、不規則に動くサッカー選手を追うのに、使い易さを左右する。もちろん、これは私の場合であって、指定するフレームやその位置、それによる使いやすさは、縦か横かで違うし、狙う被写体や望む構図でも違ってくるので、あくまで私の場合なのだが、7Dのこの位置が一番使いやすい。45点のAFフレーム全てを指定できた1D2から1D3に持ち替えた時、主とするフレームの位置の点で慣れるまで苦労をしたことがあった。僅かな差のようだが私には、この点では7Dの方が選手を追いやすいし、たぶん再度45点全てを指定でき、精度も上がった1D4は、更に使いやすいだろう。
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終戦 [巷の雑感]

雨がしたたり落ちるなか、試合終了のホイッスルがグランドに響いた。整列する選手たちの眼は真っ赤だったが、泣き崩れたりすることなく、みんな充実したいい表情をしていたことを、ファインダーで確認した。多くの保護者と後輩たちに、終戦の挨拶をする姿を撮り終えると、私は構えたカメラをゆっくりと下ろした。見上げた空は暗く、涙のような雨がしたたり落ちてきて、私の瞳を濡らしてくれていた。ふーっと息を吐く。すーっと空気を吸う。こんなにも素晴らしい気分になれたのは、何年ぶりのことだろう。全ての想いから解放された今、清々しい、という以外の言葉は見つからない。敗戦の悔しさ、後悔、終わったことの残念さ、虚しさ、そんなものは微塵も感じない。つい先ほどまで、歓声と闘志がぶつかり合っていたのが、ウソのように静まり返り、ただただ空からしたたり落ちる滴を受け止めているグランドの片隅に一人立ち、私は何とも言葉に表すことのできない、湧きあがる感情、重くのしかかる想いが全て霧散していくような、解放感にも似た空気の中にいた。

(この記事は、前回の「最後の試合」の続編として、そして多くの方々から頂いたコメントへのお返しとして、書かせていただきます)。

終戦1.jpg

午前中は晴れ間も覗いていたというのに、試合開始早々、雨が降り出した。一次リーグ最終戦を、奇跡的なPK勝ちで二次リーグに進んだ愚息1号のチームは、しかしやはり実力差は如何ともしがたく、前日の優勝候補との一戦で大敗したことで、二次リーグ敗退が確定していた。今日の試合は、敗退者同士の消化試合となってしまったが、欲も重圧も無くなったせいか、かえって選手たちの最後の一戦にかける心意気は強かったような気がした。しかし、試合開始直後にそれが裏目に出る。一発レッドカード。残りの70分を、一人少ない十人で戦うことを余儀なくされる。ただそこからが、実はこの試合の始まりだった。一人少ないハンディを、運動量と巧みなポジションチェンジで補い、何度も相手ゴールに迫り、決定機を造り出した。1点ビハインドの後半が始まってもそれは変わらず、ファインダーを通して見る選手たちの表情は、これまで何十試合も見てきた私の眼と心に、気合と想いを伝えてくれる。確かに、技術的に未熟なチームで、この場で戦うには力不足であっただろうが、今持てる自らの力を全て出す、という意気は、ピッチに立つ全員から感じられた。さすがに最後は足が止まり、とどめの一撃をくらい、2対0で最後の試合を終えることとなった。
試合後の選手たちの想いは、それぞれ様々だったことだろう。我が愚息は、傍らにいる私に眼を合わせようとはしないが、その表情から窺い知るに、悲壮感や後悔は微塵も無く、今の私の気持ちと同一であることを確信できた。勝つために全力を尽くす、そのためにサッカーグランドに足を踏み入れるということは、多分もう二度と無いであろう。そんな想いがふと頭をよぎった時、一瞬さみしげな眼をみせた息子だったが、それはすぐに消えてしまった。
振り返ってみれば、14年という永い間、サッカーを第一に考え、より強く、より上手くなることを望み、相手に勝つ、その為にどうすればよいか、それをずっと考えて育ってきたようにも思える。そのために汗も涙も流し、怪我を克服し、仲間との絆を深め、歓喜に酔いしれ、挫折に苦しみ、相手より優れていることを欲し、勝利を得るということをずっと目指してきた。そしてそれが血と肉となり、強くたくましくし、今日の姿を造ってくれたのだと思う。それは正しく、素晴らしいことであったと信じている。
ただ、ピッチを去る時に、一つだけ伝えたいことがある。これまで全力で走りまわったグランドは、68m×105mの四角に区切られたところ、これまで全身全霊で守ってきたゴールは、7.32m×2.44mにすぎない、ということを。そしてそのグランドを一歩外に出て見てみると、それよりも遥かに広い世界が広がっている、ということを。でもそんなこと、私があえて言うまでもないのかもしれない。スパイクを脱ぐ、という結論を出した息子は、もうそれに気付き始めているに違いないから。
息子の友人には、卒業後もサッカーを続け、自らを厳しくし、より高みに挑む者たちもいる。強者が偉く、勝者が尊ばれ、弱者は頭を下げ、敗者は去らねばばらぬ。より強くなることは難しく、勝者であり続けることは、なお難しい、厳しい世界。そこに挑戦する道を選ぶのはまた、素晴らしいことであり、サッカーという競技に微力ながら関わった者として、応援したい気持ちは止まるものではない。
実はそんな勝ち負けは、スポーツのみならず、この世の至る所にあり、これからの人生、永遠に続くかもしれない。そこにはより大きな幸福が有るかもしれないし、より深い辛苦が有るかもしれない。ただしかし、この14年にいったん終止符を打つというなら、そんな勝ち負けが全てではない、実はまた別の世界もある、ということを、息子には眺めてみて欲しいと思う。サッカーグランドよりも広い競技場で、自己の限界に挑むものもいる。サッカーグランドよりも狭いコートで、切磋琢磨するものもいる。しかし、そのサッカーグランドから、ふと目を向けると、綺麗な花を咲かせる野山が広がっていたり、鳥が飛び交う大空が広がっていたりする。そしてその向こうに、世のため人のため、家族のために額に汗して働く人々の住む街があったりする。たとえ世界は一つだとしても、歩む道は無限にあり、喜びも悲しみも、幾万幾千とあることを、知って欲しいと願っている。


愚息1号のサッカー生活も、これにて一先ず幕を下ろします。このブログをご覧の方の中で、応援していただいた方々、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。そして、このブログをご覧の方の中で、サッカー少年の保護者の方々、叱咤激励しより高みを目指すのも、また別の目標を目指すのも、良いと思います。ただ最後は(それがいつになるか分かりませんが)、その子の親であったことを、幸せに感じて欲しいと思います。
私は今、幸せです。



エピローグ


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