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客の立場・逆の立場 [巷の雑感]


休日のラーメン屋へ昼食を取りにいった。向かいの席では、3~4歳と思われる子供2人を連れた家族連れが座っていた。「こぼしちゃった」「こぼしちゃだめよ。拾いなさい」という会話が聞こえたが、テーブルの下にバラ撒かれたチャーハンや紙ナプキンなどを、見て知っていながら、親も子も一向に拾う気配がない。その茶髪の若い夫婦はどうするのかな、と見ていると、食べ終わるとサッサとそのままにして、まるで自分たちのしたことではないような顔つきで、出て行った。その後、込み合っている店内で、「申し訳ありません」と他の客に声をかけながら掃除しだしたのは、言うまでもなく店員たちであった。私の横の老夫婦が、ラーメンを食べ終わって出て行った。そのテーブル周りは、当り前の如く、綺麗なままだ。
その若い夫婦だって、家で食事をしていれば、子供が汚したり散らかしたりしたら、自分たちで掃除しているだろう。他にしてくれる人はいないのだから。しかし、こうした店ではしない。どうしてだろう。店員がするのが当然だから? 自分たちは客だから? 料金を払っているのは自分たちだから? 散らかした後始末をするのは店員の仕事だから? それも支払った料金に含まれているはずだから? それなら散らかさない先ほどの老夫婦は、もっと料金を安くしてあげないといけない。
サービス業に従事していると、こんな客は必ずいる。マナー不足だ、と一言でいえばそうなのだが、客という立場に立つと、どうも自分たちの方が偉くなったように勘違いする人が多い。確かに、店の従業員は、客の払った代金から給料を貰っているのかもしれない。しかし、だからといって、客のしもべや奴隷になったわけではない。客も従業員も同じ人間、同等なのだ。ただ一時的に、サービスする側とされる側になっただけのことなのだ。
以前、入社したての新人と一緒に食事に行った際、「今はオレたちは客だから」といった態度や行為に激怒し、一喝したことがあった。自分たちがサービス業従事者だからこそ、そこで働く人の気持ちが一番分かるからこそ、そんな行為や態度は控えるべきだ、と。サービスを提供する側は、奉仕精神旺盛な人ばかりとは限らないし、偉人や人格者ばかりとは限らない。そして、そういった立派な人になりなさい、と言っているのではない。サービス業に従事する我々は、今は逆の客という立場だが、店の従業員は我々と同じ仲間なのだ、と知って欲しかった。
ごく一部の人を除いては、仕事や日常生活において、私たちみんな、客の立場になったり、その逆の立場になったりして過ごしている。だから客の立場も、その逆の立場も、分かるはずだ。客の立場になった時に、日ごろの憂さを晴らそう、というのでは、いやそこまでしなくても、自分は今は客だから、という態度や行為は、やっぱり心が貧しいような気がする。
これから年末年始を控えて、そういった客の立場になることも多いと思う。そんな楽しい時に、逆の立場になって考えよう、という無粋なことを言うつもりはない。ただ、サービスされる側もする側も、みんなが気持よく年末年始を過ごせれば良いと思う。


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